独自アンケート 結果と考察
このアンケートは、NPO法人キーデザインが運営する、無料のLINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」にて収集したものです。
概要
期間
2021年10月8日~12日(5日間)
対象者
不登校の子どもを持つ保護者で、お母さんのほけんしつ登録者約550名。うち158名より回答あり。
目的
コロナ禍による休校や生活の変化が要因で不登校になった、と声をよく聴くようになった。実際にどういった経緯で不登校になるのか、またどのくらい影響があるのか確かめるためにアンケートを実施した。結果については、今後の支援策を考える際に参考にしていく。
その他回答者基本事項
子どもの性別
男性48.7% 女性51.3%
子どもの所属
小学生38% 中学生43.7% 高校生18.3%
回答者の住まい
今回は質問に含めず。
結果と考察
①コロナ禍の不安や学校生活の変化が、不登校のきっかけに。
コロナ禍後(2020年3月~)に行き渋り・不登校になった家庭は、62.6%にのぼる。必ずしもそのすべてがコロナの影響があったとは言えないが、その影響があったかどうかは次の棒グラフの回答でわかる。
またコロナ禍で、元々不登校だった子どもの中には、学校との関わりができた・増えたというケースもある。「分散登校で人数が減ることによってプレッシャーが薄れ登校できるようになった」「勉強自体は苦手ではないためオンラインで出席するようになった」など、コロナ禍により人との関わり方・方法が変わることで、学校に関われるようになったという声もある。一方で、元々行き渋りで、部活だけ行っている子どもが部活禁止で完全に学校とのつながりを断たれてしまったケースや、学校とのつながりはなく唯一休日など買い物には出かけていたがそれもできなくなったケースなどもある。
「コロナ禍による学校内の変化がきっかけ」と回答した方が59.8%となった。理由は様々ある。下記は、実際にアンケートで回答いただいた、不登校のきっかけに関する詳細である。
●卒業、入学の時期がコロナの休校と重なっていたので、小学校の終わりと中学の始まりがあいまいなまま新中1の生活に放り込まれ、勉強は難しくなり休校の遅れを取り戻すために詰め込まれるようになりました。そのストレスのせいではないかと私は感じます。
●学校の学習や感染予防の指導に対して不信感が出てきた。その後学習する意味を考えるようになり自分には必要ないと考えるようになった。休校になりますます学校が遠くへ離れていった感じもあった。
●本人からは学校給食時のストレスとも聞いています。 残さず食べることを目標にしている。コロナ前ならば増減可能だったが、コロナで配膳されたらそのまま食べることになったが食べきれない。だから給食が嫌いで行きたくない。と話しています。
●努力して第1希望の高校に入ったのに全てが自粛、カリキュラムは詰め込み、遊びに行けない。とうとう娘は壊れました。
●コロナ前からもあったけど、オンライン授業のときに真面目に受けられなく、自制心が効かなくなり、特にゲーム等や昼夜逆転になり、授業内容についていけなくなりおもしろくなくなったのでは?と感じました。
●コロナ休校前の生活と比べて、休校中はゆっくりしていて、ギャップが大きく、もとのリズムに戻せなくなった。
「休校中」と「学校再開後」の2点に大きく分かれる。休校中については、小学校、中学校へ進学するタイミングでの休校措置に切り替えをうまくできなかったこと、また休校中のオンライン授業や宿題に対応できないといったことが声として多かった。学校再開後については、黙食やマスク着用、部活動禁止など生活様式の急激な変化にストレスを感じる児童生徒もおり、また教員一人ひとりも新型コロナ対策への臨機応変な対応を求められ、児童生徒一人ひとりに合わせた対応が難しい状況にもあったものと思われる。
また、新型コロナウイルスによる直接的な影響としては
・高熱を出した後、微熱が3週間ほど続き、長期間欠席した。病院で処方された抗生物質を服用後、自律神経の不調が続き、学校に行けなくなってしまった。
といった声もあった。
②感染を避けるために、第三者へ相談する機会減
※上記項目が見えづらいため、改めて記す。
・第三者へ相談する機会が減った(相談先が、体制を変えるなどで相談しづらくなった)
・第三者へ相談する機会が減った(外出を控えるようになり、相談する機会が減った)
・コロナ禍前より収入が減った(ご夫婦どちらかが減っていればチェックしてください)
・親子で接する時間が減った
・夫婦で接する時間が減った
・親子間での衝突が増えた
・夫婦間での衝突が増えた
・どれもあてはまらない
影響を受けたと回答した方の中で、最も回答数が多かったのは「第三者へ相談する機会が減った(外出を控えるようになり、相談する機会が減った)」である。コロナ禍で、感染をおそれて・避けるために、外出や人と会うことを控えるようになったことが、相談の頻度減少へつながっている。1日経つと子どもの状況も変わっていく中で、私たちが捉える以上に、ご家庭にとって1回の相談が大きな価値を持つ。回数減により、保護者も孤立を深め、精神的に追い詰められることが想像できる。
また親子間での衝突が増えた2割ほどおり、実際にはリモートワークにより元々関係性が良くなかった親子で顔を合わせる機会が増え、それにより衝突し、子どもが部屋にこもる時間が増えたなどといった声もあった。
③不登校の子どもの4割近くに、希死念慮や自傷行為が見られる
不登校・行き渋りになってからの子どもの様子として「自傷行為(に近い行為)があった」16.5%、「希死念慮を持つような発言(「死にたい」など)が見られた」37.3%という結果となった。6割以上が、自己否定する発言や、外出・人と関わることに抵抗を持っていることもわかっており、こうした状況が続けば続くほど、希死念慮や自傷行為などの言動へつながることが考えられる。下記は実際にLINE相談窓口のほうであった保護者の声である。
・夏休み明け死にたいと言われました。無理に学校に行かせても腹痛などで帰って来てしまい、悩んだ末学校に行かせないことを選択しました。
・「毎日否定されるようで、自分がダメ人間に思える。1日に何度も死にたいと思う」と口にするようになり
・「生きるのが辛い。死にたい、殺してくれ。」と声を荒げていました。
結果と考察、今後の支援について
○コロナ禍はあくまでキッカケ。不登校の原因は多様で、原因追及だけでなく、今後の道筋を現実的に描いていく必要がある。
○オンライン授業の出席扱いを認定する地域を増やすことや、ますますの学校とフリースクールの連携の充実を図りたい。
コロナ禍の影響はあった。直接的、つまりコロナ感染不安による外出自粛や学校生活への不安も一定数あったが、間接的な影響のほうが大きく声は届いた。休校措置により生活リズムが崩れる、入学のタイミングだったため友達との関係づくりが難しかったなど。声として多く届くことはなかったが、例えば、マスク着用によってコミュニケーションの難易度があがったことや、そもそも会話量の減少・意思疎通が十分に図れないといったことも背景にはあると考えられる。特に直接相談を受けているケースでは、発達障がいまたそのグレーゾーンにあたる子ども達は、コロナ感染に過敏になり必要以上に不安を感じる、外とのつながりを断ってしまうといったことが起きており、他の子どもと比較し影響は大きいと考えられる。
今後の対応としては、コロナ禍であるかどうかに関係なく、まず学校に行くことをゴールにせず、子どもが安心して過ごせる環境・時間を用意することが大切である。(これは「教育機会確保法」でも明示されていることである。)そのためには、子どもの代わりにSOSを発信してくれる保護者の相談支援を充実させることが必須である。これを機に行政には、リモート(チャット)での相談支援も拡充してほしいと強く願う。私たちも現在チャットアプリ「LINE」を活用し運営しているが、運営にはコロナ感染予防なども必要なく、コロナ禍でもノンストレスで運営ができる。元々のチャットのメリットとしても記録が残ることや、1人ではなく複数人で支援にあたることができるなど、より充実した支援内容を期待できる。
またオンライン授業の実施やその出席扱いについて、最近、不登校児童生徒のみが出席扱いの対象にならないなどメディアを中心に騒がれてもいたが、ぜひ栃木県では不登校児童生徒も対象とし、子ども達の学ぶ意欲を継続させる対応をお願いしたい。私たちフリースクールを運営する民間ももちろん学習の必要を感じてはいるが、不登校の子どもが全国的にも増えていく中で、各フリースクールに新しい子もどんどん入ってくる。最初の数週間から数か月は、人への恐怖心やコミュニケーションをとることの練習に時間が大いに割かれるため、学習環境を整えることはそう容易なことではない。個別性を特に重視し支援にあたるフリースクールでは、どれだけ人員の配置ができるかが大きなカギであるが、今のところ国の補助などもないため、家庭の負担を強いるか、寄付など各団体で予算を確保し、ギリギリの中でやっていかねばならない。その環境で学習に目を向けることより、学校で行われている授業をリモート(オンデマンド配信含む)で配信し、学習の機能は学校、コミュニケーションや生きる力を育むのはフリースクール、のような役割分担をしていくことも視野に入れ、連携をとっていきたいと考える。
私たちは、お母さんのほけんしつを通して、子育てする親御さんを孤立させない、一人ひとりの子育てを地域で支えていける社会をつくっていきたいと考えています。2021年10月1日より、クラウドファンディングをスタートしました。お母さんのほけんしつの運営資金を集めるためのものです。今回のアンケート調査も、多くの方の寄付により実行することができました。よろしければ、ぜひご支援いただけますと幸いです。